日本SPICEネットワークにおいて『Automotive SPICEにおけるAIプロダクト品質保証』研究会を立ち上げました!

STJ

こんにちは、センスタイムジャパンの真鍋です。センスタイムでは自動運転をはじめとする車載分野でのAIプロダクトを開発しています。その中で「車載分野でのAI搭載プロダクトの品質保証」という新しい分野にも積極的に取り組んでいます。2020年7月より、Automotive SPICEを主としたユーザーグループである日本SPICEネットワークにおいて、『Automotive SPICEにおけるAIプロダクト品質保証』研究会を立ち上げました。社外の有識者と共に毎月活発な議論を行っています。
本記事では、日本SPICEネットワーク第33回勉強会(2020年12月18日開催)での研究会活動の報告をもとに、研究会立ち上げの背景や活動内容を紹介します。

研究会立ち上げの背景

AI技術の進化が著しい中、車載分野においてもAIプロダクトを扱う機会が増えてきました。しかし、「Automotive SPICEを用いてAIプロダクトをどうアセスメントすればよいのか」に対する解をまだ誰も持ち合わせていません。

  • AI開発は従来のソフトウェア開発と開発方法が根本的に異なる(帰納的開発)

これがAutomotive SPICEを用いたAIプロダクトの評価を難しくしている理由です。
社外の有識者と共に議論を深め、この課題を解決するために本研究会を立ち上げました。

演繹的開発と帰納的開発

AI開発と従来のソフトウェア開発の開発方法の違いを説明します。
従来からのソフトウェア開発は演繹的開発と呼ばれ、計算や判断を行うための知識や規則(アルゴリズム)を人がプログラムとして実装します。
一方、AIを含む機械学習を用いた開発は帰納的開発と呼ばれ、計算や判断を行うための知識や規則(アルゴリズム)を訓練データから獲得させます。

引用元:第33回勉強会『Automotive SPICEによるAIプロダクト品質保証』研究会活動報告, 日本SPICEネットワーク第33回勉強会, 2020年12月18日


AI開発は機械学習を用いた帰納的開発であり、従来のソフトウェアとは開発方法が異なります。そのため「Automotive SPICEで想定している活動が、AIプロダクトの開発をカバーできているのか」という問いを解き明かしていくのが、本研究会の活動テーマとなります。

活動内容の紹介

毎月2時間程度の定例会で活発に議論をしています。
ここでは、2020年7月から2020年12月までの全6回の活動を紹介します。

引用元:第33回勉強会『Automotive SPICEによるAIプロダクト品質保証』研究会活動報告, 日本SPICEネットワーク第33回勉強会, 2020年12月18日


①AIプロダクト品質保証の課題の共有

車載に限らずAIプロダクトの品質保証上の課題についてメンバ間で共有しました。

②AI開発の流れや構成品目の理解

AI開発特有の開発の流れを整理しながら、訓練データ、機械学習モデル、学習プログラムなど構成管理品目の理解を進めました。

③機械学習モデルのAutomotive SPICEでの扱いを議論

機械学習モデルは、新しく扱う概念のものであるためAutomotive SPICEでどのように扱うのが良いのかを議論しました。

④AI品質保証のガイドラインの理解
公開されているガイドラインを読み解き、AIプロダクトの品質保証について理解を深めました。主に参考にしたガイドラインは下記になります。

⑤機械学習開発プロセスとAutomotive SPICEの関連を議論
AIを含む機械学習開発プロセスとAutomotive SPICEの関係について議論を始めました。

今後の取り組み

AIを搭載した車載ECU開発の典型的な例を題材に、Automotive SPICEでAIプロダクトをどうアセスメントするかを検討していきます。
研究会としての成果がまとまれば、みなさんにも公表したいと考えています。

本研究会の目的は「Automotive SPICEを用いてAIプロダクトをどうアセスメントすればよいのかを明らかにすること」です。しかし、それは同時にどうやってAIプロダクトの品質を確保するのか、それにはどう開発するのがよいかを問うものでもあります。これらは車載ソフトウェアの開発者や品質保証担当者としても、是非とも明らかにしたい内容と考えています。

本研究会に関心のある方、参画を希望される方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。
お問い合わせはこちらからお願いいたします。

参考文献

[1]AIプロダクト品質保証コンソーシアム(QA4AIコンソーシアム),AIプロダクト品質保証ガイドライン2020.08版,http://www.qa4ai.jp/QA4AI.Guideline.202008.pdf (PDF).

[2]国立研究開発法人産業技術総合研究所,機械学習品質マネジメントガイドライン 第1版,https://www.cpsec.aist.go.jp/achievements/aiqm/AIQM-Guideline-1.0.1.pdf (PDF).

投稿者プロフィール

真鍋 誠一
真鍋 誠一
研究開発センター 開発プロセスチーム チームマネージャー

intacs™認定 Automotive SPICE プロビジョナルアセッサー
JSTQB認定テスト技術者資格 Advanced Level Test Analyst
AIプロダクト品質保証コンソーシアム(QA4AIコンソーシアム)自動運転WG(2020/7~)
日本SPICEネットワーク『Automotive SPICEにおけるAIプロダクト品質保証』研究会代表

趣味はバイクトライアル。2人の娘のお父さん!