品質よもやま話(その1)~「品質」っておいしいの?~

STJ

こんにちは。センスタイムジャパンで品質保証活動に携わっています、宿口(しゅくぐち)です。
アドベントカレンダー7日目の本記事では、品質よもやま話として、そもそもの「品質とは?」についてお話します。

「品質が良い」って?

ソフトウェアに限らず工業製品を取り扱っていると、とかく「品質」「品質」と、かしましいものです。
”使えればいいじゃん!”と思うのですが世の中にそれは許さず、特に1990年代後半にISO9000シリーズという品質マネジメントシステムの国際規格が登場してからは「品質」への関心が高まり、”使えればいいじゃん!”では済まなくなったように思います。ちなみに、ISO9000シリーズは工業製品だけを対象にせず、企業が提供するすべての活動の品質管理の方法を規定しており、それには、いわゆる「サービス」も含まれています。

では、その「品質」とは何でしょう。何をもって「品質が良い」というのでしょうか。具体的に形があるものは、その見た目、手触り、使い勝手、丈夫さなどをもって「品質が良い」「品質が悪い」などといっています。では、形を持たない我々が扱っているソフトウェアや先ほど示したサービスの品質は何であり、何をもって良し悪しをいうのでしょうか。

「品質」を定義する

「品質」という言葉はどうやらアリストテレスの時代から存在しているみたいですが、日本語を辞書的に解釈すると
「品(何かの用途にあてる、形があるもの)」の「質(ものが成り立つものとして考えられるもの。中身)」
となります、が…具体性に欠けるので、偉い人の言葉を見てみましょう。

有名なところでは、
 「顧客や製品の”要求”に対し、どれだけ満たせているか」P.Crosby
 「システムが稼働するときの本当のユーザニーズに合致しているか」James Martin
 「品質は誰かにとっての価値である」 G.Winberg
があげられます。
ちなみにISO9000シリーズでは
 「本来備わっている特性の集まりが要求事項を満たす程度」
と定義されています。

ここで気を付けることは、「品質」と言いながら具体的な品(物)の良し悪しを判断できる基準を示さずに、「(誰かの)要求に合っている度合」と表現されていることです。その点では、Winbergの「誰かにとっての価値」が最も近く、言い換えれば「使う人の要求」ということになり、要求が満たされていれば品質が高いということになります。

「品質=使う人の要求」である!と定義しました…か?
「品質=要求」は、実は何も変わっていないし、何も言っていないのに等しいですね。「人の要求」とは人の価値観、使う状況・条件や時代で変わるものだから、一意に定義できないのですね。

例えば、車は1990年代まではエンジンの出力、最高速度、加速度などが品質判断の価値とされたようでカタログではそれらが強調されていました。現在はそのような走行性能よりも車体の頑丈さ、安全に関する装備など安全性能が価値とされカタログを飾っています。で、車を買う人はカタログや販売員からの情報をもとに自分のニーズ(要求)にあった車を選ぶわけです。(まぁ、家族間でも価値観が合わず…ってことは あるある ですかね)

それでも「品質=要求」とすると

「品質の良し悪し」は使う人の価値観、使われる状況次第で変わるのは実際のようで、具体的に品質を定義すると記述は広範囲に及び、それだけで精魂尽き果てそうです。それを避けるために、具象的に定めるのではなく抽象度上げてメタ的に定義したのが「品質=要求」であると考えられます。
実際の製品開発の品質はメタ定義を基にして状況に応じて具体的に定義していく必要があります。これが要求分析活動なのですね。ただ、問題は要求は広がる傾向にあること、また、未知のものは「使う人」は要求を出せないこと。実際の開発活動では、お客さまに”要望”はあるが”要求”は無いということは間々あります。その時は”(お客さまとともに)要求を作っていく”ことになります。

結局「品質」って?

品質は”誰かにとっての価値”であり、それは”お客さまの要求”であり、その要求を満たす程度によって品質の良し悪しが判断されるというのが、現在の主流の考え方のようで、それに基づいて国際規格が制定され、様々な品質に関する活動がなされています。
しかし、この「要求」というのが厄介で、無理・無茶な要求には対応できませんし、未知のものには具体的な要求は出せません。

特にAI(あえてAIという)およびAI搭載という、これまでにない技術を開発しているセンスタイムジャパンにとっては、お客さまから要求を引き出すことはかなり難しいものだと考えて、要求を開発し、品質を定義していくことが重要な活動ではないか、とわたしは考えます。

広義として、「品質」とは、技術や製品をよく理解して「創り出していく」ものなのだと思います。

品質よもやま話、明日公開の(その2)に続きます!

投稿者プロフィール

shukuguchi
shukuguchi
品質活動担当。
”正しく”楽をすることを模索中。
愛車は’91年型RC36