センスタイムジャパンでのグローバル開発の様子について

こんにちは。研究開発センターの上野山です。

もう師走に入りましたね。私たちがいる京都も紅葉が終わって日に日に寒さが厳しくなってきています。センスタイムジャパンは12月が決算月なので、今年度の仕事と来年度の計画をしっかり納めるべくみんな少しそわそわしていますね。

アドベントカレンダー企画2日目の今回は、センスタイムジャパンでの海外チームとの開発の様子を簡単にご紹介したいと思います。

センスタイムグループの開発拠点は、香港・深圳・上海・杭州・北京・シンガポール・京都・東京など、国やリージョンを超えて存在しており、各拠点の技術者はお互いに連携して開発を行っています。実際、私たちセンスタイムジャパンでも、技術開発や商品開発を進める際はほとんどの場合に海外拠点の技術者と協力して進めています。

海外チームとの主な連携開発パターン

具体的な連携開発の進め方としては、開発する技術やプロダクトに応じて次の3パターンのどれかで進めることが多いです。

来日した技術者(右2名)と日本人技術者(左2名)で1ヶ月ほど泊まり込みの開発合宿(2017年)

  1. 海外拠点の研究者も開発チームに直接参画し、混成チームで開発する
  2. 海外拠点の研究員から技術レビューやアドバイスを受けながら、国内チームで開発する
  3. 海外拠点で開発している最先端技術を提供してもらい、国内で開発を行う

開発する技術の難易度が高いプロジェクトの場合は、パターン1で行うことが多いです。海外拠点には、CVPR等のカンファレンスでオーラル登壇するようなメンバーが数多く在籍していますので、センスタイムグループの英知を結集した研究者チームを国や地域を越えて集めてプロジェクトチームを編成します。

北京でのチームビルディング(北京郊外の香山公園)研究院長や日本法人代表も参加

開発する技術の方向性や実現方針、プロダクトに搭載する際の制約やプロダクトに与える価値に始まり、データ収集計画や評価方法、アルゴリズム・モデルの開発状況など、国内開発の場合と同じくかなり頻繁に状況共有を採りながら開発を進めています。案件によっては、数週間〜数ヶ月にわたって海外拠点メンバーが日本拠点に滞在、もしくはその反対に日本拠点メンバーが海外拠点に滞在したり、合同でチームビルディングを行うなどで、集中的に開発立ち上げを行うこともあります。

一方、国内のお客さまやパートナーのかたと頻繁にすり合わせを行いながら開発するようなケースでは、パターン2で行うこともあります。例えば、フィールドテストを行ってフィードバックをいただきながらその場で改善を繰り返すこともありますが、開発メンバがフットワーク良く現地対応できる体制が何より効率的です。

また、センスタイムグループ内に既に確立された技術があり、それをベースにプロダクト化するような案件の場合は、パターン3で開発を進めることが多いです。例えば、自動車や人体の検出・認識技術は既に様々な環境条件に合わせた認識モデルが開発・検証されたものが存在していますし、ARMやCUDAなど各種の推論環境に合わせた深層学習ランタイムエンジンも存在しています。そういった社内の技術アセットを組み合わせて、精度・性能の高いアプリケーションをスピーディに開発しています。

海外チームと連携する中で得られる刺激

私自身、元々は日系メーカーのシステム/ソフトウェアエンジニアをしておりまして、5年半前にセンスタイムジャパンに入社しました。画像認識技術のレベルの高さに惹かれたことが動機ですが、実際に入社してみて強く刺激を受けたことは、新たな技術を生み出すスピードと、最先端技術を牽引しているという強い自負や責任感でした。

CVPRで日中研究者が集まった際のディナーディスカッション

入社当時、国内のお客様(当時未契約)から「〇〇の認識ができればおもしろそうだが、そういった技術はあるか」と相談を受けたことがあります。中国拠点の研究員に相談してみたところ次のような答えが返ってきました。「まだその認識技術はないので、モデル学習用データの収集を含めて開発が必要だ。ただ、残念ながら今は忙しくてすぐに作ることはできない。しばらく待ってもらえるならモデルを作って提供できるがそれでも良いか。」と。そこでどれくらいかかるか質問したところ、「来週には提供できる。」と返ってきました。1ヶ月くらいを想定していた私は、驚きとともにこの開発スピードとそれを裏付ける技術力への自信がセンスタイムの力だと感じたことを今でも覚えています。

一方で、日本拠点と海外拠点との間のカルチャーギャップからくる苦労もあります。

例えば日本では私たちのパートナーのかたなども含め、開発において設計や分析を重視し高い完成度を志向する傾向があります。一方で我々の海外拠点チームでは、それらよりも結果重視の考え方をもち、綿密に設計分析するよりも素早く実現してからフィールドでの課題抽出と改善を高速に回すことで開発を進めています。後者は特に単一機能のソフトウェア開発では非常に有効に働きます。でも、例えば自動車のような、外部モジュールや外部システムと複雑に連携した動作が求められるような場合、頻度は低くても一度問題を起こすと人に危害を及ぼす可能性の高い用途に対しては、前者の考え方も必要不可欠になってきます。私たちの開発においても、この考え方の間で認識の相違が起きることもしばしば発生しています。

一件相反する考え方ではありますが、今後自動運転などミッションクリティカルな用途へAI技術を応用していくためにはどちらの考え方も必要不可欠ですし、それを乗り越えることで応用分野を大きく広げられるとも感じています。センスタイムジャパンは、ちょうど双方の中間に立ってブリッジできるポジションにいます。両立できるような何かしらのフレームワーク、高いフレキシビリティを持ったアーキテクチャーのようなものを、我々が確立していければと考えています。

ポストコロナでの連携加速に向けて

コロナ禍に入る前は、センスタイムグループの拠点間で積極的に往来をしながら、連携を図ってきました。一方で昨年からはリモートベースでの共同開発のみに頼らざるを得ません。センスタイムでは元々同じチームでも地域を分散して所属していますので、ほとんどの部分はトラブル無く、リモートで従来同様開発を進めてきました。しかしながら、認識技術が相手するのは物理世界です。フィールドに立つことが「百聞は一見にしかず」になることも少なくありません。例えば同じ道路環境でも中国と日本では大きく異なります。そのため、変異種の動向も落ち着いて相互の入国制限が緩和された頃には、私たち技術者も往来を再開させ、数多くの技術課題に対して同じ現場同じ目線で議論できる機会を再び作っていければと考えています。

グローバルチームの一員となって、一緒に世界最高の技術を生み出し、各地の顧客ニーズに適合していく経験に関心を持っている技術者やプロジェクトマネージャを募集しています。
カジュアル面談では、具体的な開発現場の様子など詳細な実態も含めてご紹介できます。
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